2013/10/9

「ただいまー！よーこー」

向こうの方から脳天気な声が聞こえてきた。

随分と早いご帰宅だこと。

「あれ？よーこさーん？」

「朝っぱらからうるさいわよ」

「ゲッ」

「人の顔見てゲッって何よ、ゲッって」

「だって江利子がいるなんて思わなかったから」

「泊まったのよ昨日」

「そーなんだ？知らなかった」

知らなかった？

「来るなら来るって言ってくれればいいのに」

「蓉子とはずっと話してたわ」

「うわー、聖ちゃん仲間外れにされちゃった」

「帰ってこないのが悪いんでしょ」

分が悪いと判断したのか、彼女は私の顔を見て黙り込んでしまった。

いいわ、それなら少し傷つきなさいよ。

「聖」

「何？」

「あまりフラフラしてるようなら、蓉子、もらっていくから」

私なら寂しい思いはさせない。

あんなに面白い人、手放したりしない。

「……だ」

「何よ」

「ダメだ。蓉子は、私のだ」

嫉妬心丸出し。

自分のことはさんざん棚に上げて、なんて小言の１つ言いたいところだけれど、今はそのまま微笑んであげよう。

＊＊＊

「木曜日の情事」のサイドストーリーですね。
江利子が泊まった翌朝。
蓉子が珍しく起きずにいた翌朝。
早くに帰宅した聖と起きていた江利子のやり取り。
これを見ると、起きてきた蓉子をきつく抱き締める聖の嫉妬心丸出し感がより伝わるのではないかという浅はかな考えです。
がんばろう(´・ω・｀)